セピア‐ため息の行方

第２章‐タイムワープ

　　気が付くと花梨は何故か淡いピンク色の山茶花（さざんか）の生垣の中を歩いていた。その綺麗な淡いピンク色の山茶花に圧倒されながらも、花梨は『はっ？！此処は何処？！』と頭の中でそう小さく呟いた。


　　が、しかし花梨がそう呟いた後に少し頭痛がして頭の奥が微かにズキリと痛んだ。すると突然生垣の奥から顔をチョコンと出してニコニコ顔の若い女性（じょせい）が花梨に声をかけてきた。


「まあ花梨ちゃんこんなに大きくなって。良く遊びに来てくれたわね。さあさ、お家にお入りなさいな。花梨ちゃんのために今日はご馳走を用意したのよ」
　　　とそう花梨に声をかけて来たその女性（ひと）はまるで竹久夢二が描くイラストの画集から飛び出て来たような感じの女性（ひと）だった。


　　するとその女性は突然親し気に花梨の肩にそっと手を置き、民家の中へと招き入れようとしたので、思わず花梨はびっくりしてその女性の手を振り払い素早く顔を見た。


「えっ？！そ･そんなバカな？！……」
　　と言って花梨が目を凝らしてその女性の顔を良く見てみると、な・なんと昨夜久し振りに見ていたあの色褪（いろあ）せたセピア色の写真の中で優しく微笑んでいた李だった……。