セピア‐ため息の行方
「あっちゃー忘れてた」
  と一言言いながら内海は慌て腕時計とタバコを拾った。


  だが拾い上げた腕時計は地面に落ちた衝撃で見事にガラスが割れ、壊れていた。


  ちなみに内海は緊急用にと病院側に前もって自分のケータイ番号を伝えていた。でもって病院からの連絡だとすぐに解るように、すぐさま病院の電話番号に着信音を設定した。


  尚、この時言い知れない程の戦慄(せんりつ)が内海の体中を駆け巡り、そして次第に内海の心をとてつもない大きな不安が覆(おお)った。


『ま・まさか?!星空の身に異変が?……』と思ったが、緊急用にと病院側に告げていたケータイの着信音が鳴らなかったので、内海はすぐさまマイナスの思いを打ち消した……。
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