セピア‐ため息の行方
  するとまったりとした時間を満喫していた雛子が自分の腕時計を見て
「あっ!もうこんな時間だわ!早く家に帰らないと」
  と柵から飛び降りながら言った。


 そして皆は柵に座る時にそれぞれ地面に置いた重そうな分厚いマニュアル本を抱えて、素早く身支度を整えた。


「次のディスカッションまでにその本の内容を大体暗記してきた方が良いよ。早く覚えたらそれだけ次に進める訳だし。覚え方としてはなるべく心を無にして集中すれば良いと思うよ」


  とそう雛子言われて
「う~ん心を無にしてねえー。ってそう簡単に言われても。はっきり言って私には無理な気さえするんだけれど……」
  と、さも花梨は自信なさ気に小さな声でそう呟いた。


「だよね。こんな分厚い本の内容を短期間で覚えるなんてそれこそ神業としか思えないよ。やっぱり雛子さんは抜群に頭脳明晰なんだ。って言うか少しでもその雛子さんの頭脳明晰さにあやかりたいものだね」
  と恭は真面目な顔をして言った。
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