セピア‐ため息の行方
  最近では30歳を過ぎても結婚をせずに親元で生活をし、僅かばかりのお金を家に入れるだけで後の収入は全部おこづかいとして使えて、しかも家事などは一切せずに洗濯やご飯作りなども親に任せて、自分は仕事に行くだけで何もしないと言う比較的に恵まれた環境の中で暮らす若者達が増えていると言う。ちなみにそれをパラサイト現象と言うのだが、花梨の場合は決してそう言う事ではない。


  花梨は今、26歳でまだ結婚相手もいなければ結婚の予定もない。だけれど家には狭いながらもプライベート面がしっかりと守れる学生時代から親に与えられた鍵付きの自分の部屋もある。それに別段これと言って家族間でのトラブルもなく居心地が悪いと言う事もない。


  それにありがたい事に家には私の大好きな曾(ひい)おじいちゃんがいて、その曾おじいちゃんが花梨の事を小さい頃からとてもかわいがってくれてやさしくもしてくれる。そんな環境なので今迄もこれからも一人暮らしをする事など花梨には到底考えられないのだ。多分この恵まれた環境の中から飛び立つのは結婚をする時なんだろうなーと花梨は漠然と思っている。


  が、しかしそんな恵まれた環境の中にいてさえも花梨には悩みがあった。ちなみに親に隠れて多額の借金があるとか、難病を抱えているからと言う類(たぐい)の切羽詰まった悩みではない。
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