セピア‐ため息の行方
「まああなたの可愛いさがより引き立つ柄ね。花梨ちゃんそれきっとあなたに良く似合うと思うわよ。じゃ私早速それに合った長襦袢(ながじゅばん)と帯を出すわね」
  と李は満面の笑みを浮かべながら隣の部屋に小走りで駆けて行った。


  花梨は普段あまり着物を着る機会がない。せいぜい夏祭りに浴衣を着る位である。この前こんな感じの本格的な着物を着たのは成人式の時だったろうか?と花梨は心の中で小さく呟いた。


  李はてきぱきとした動作で花梨の着物を着付けてゆく。


  そんな李の手慣れた着付けを見て花梨は思った。李にとっては着物が主流で生活をしてきた分だけ、着物を着ると言う習慣が身に付いているのだろうと。


  着物の着付けが終わると李は花梨の髪を結ってくれて、そして着物の柄とお揃いの椿の花の簪(かんざし)も挿(さし)てくれた。


「ほら花梨ちゃん見てごらんなさい」
  と李が言って花梨の肩に軽く両手を置くと、花梨は姿身の前に立たされた。


「良く似合っているわ。とってもステキよ」
  と李が花梨の後ろでちょこんと顔を横にして笑顔で言った。
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