セピア‐ため息の行方

そう言われて花梨は
「えーそうなのですか。自由自在に好きな年齢に戻れるのも面白いのにね」
　 と言った。


「そうよね。実は私もそう思うわ。でもこの世界ではそう言う仕組みになっているから仕方がないのよ」


この時花梨はある出来事を思い出していた。ちなみに曾おばあちゃんがお腹に子供を宿した時、子供は双子だったらしい。名前は二人が生まれる前から有莉禾（ゆりか）と莉李花（りりか）に決めていたのだと言う。なんか漢字だけで見るとあまりピンとこないけれど、音で聞くと「ゆりか」と「りりか」は名前の響きが良く似ている……。


　 まず姉である母の有莉禾が先に無事に生まれて、続いて生まれた母の妹の莉李花はなんと生まれてわずか５日で亡くなってしまったのだと言う。理由は解らないのだけれども、母の話だと多分元から妹の莉李花の寿命の長さがそれだけの期間しか生きられない運命だったんじゃないのかな？と言っていた。


　　そして更に朧（おぼろ）げな記憶を手繰（たぐ）り寄せると花梨は段々に、幼い頃に曾おじいちゃんに聞いたある出来事を鮮明に思い出した。その日は酷く蒸し暑い夏の日で部屋にはお線香の匂いとお坊さんの読経が聞こえていた。だから多分あれはお盆の時期だったと思う。