セピア‐ため息の行方
  ならばこうした人達はどう言う経路を辿って此処へ来る事が出来ると言うのだろうか?此処に来られるのは、多分普通の人間では来られないような気がする。つまりは特殊な脳力を持つ者達だけしか来られないのだとしたならばその特殊な脳力とはいったい何なのか?と花梨の頭の中で色々な解きがたい事柄が相反して次々と交錯し合い葛藤を始めた。


  でもこの世界は身体的欠陥を自由に選べてしかも自分の好みの時代を選ぶ事も出来、そして此処に留まる事も可能なのだと言う。でもって此処へ来た人達の運命はそれぞれの意思に委(ゆだ)ねられていると言う。李のそんな話を聞いて花梨は急に背筋がゾクっとするような感覚を覚えた。『では今の私の立場はいったい?』と花梨は今更ながらに言い知れない大きな不安感に襲われた。


  するとその花梨の不安を素早く察知したかのように李が口を開いた。
「さっきも私言ったと思うけれど人間にはその人を守るために何人かの守護霊って言うのが憑(つ)いているの。私は花梨ちゃんに憑(つ)いているその守護霊の一人な訳。でもって今回花梨ちゃんが交通事故に遭(あ)ったって事自体はなんて事のない怪我だったの。でもね今回、花梨ちゃんはとっても心が病んでいたから、このまま元の世界にすんなりと還す訳にはいかなかったの。花梨ちゃんにはこの世界での治療が必要だと思ったから、私自(みずか)ら敢(あ)えてこう言う形を取らせて頂いたの。花梨ちゃんには却(かえ)って迷惑だったかしら?」
  と李に言われて


「うーん。迷惑とかじゃないんですけれどなんか不思議な事に連続して遭遇するものだから、私の思考が追い付かない感じなんです……」
  と花梨はポツリと呟いた。
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