セピア‐ため息の行方

2‐大正ロマン

「ねえ李さんこの世界のは人達は死んだ次点のままの姿でしか、生活が出来ないんですか?」
  と花梨は李に質問を投げ掛けてみた。


  すると
「そんな事ないわよ。此処では自由に好きな年齢と年代が選べるわ」    と李が答えると


「そうなんですか。なんかそれって楽しそうですね。あっ!じゃあたとえば自分が死んだ次点よりか先の年齢でも良いって事ですよね?」


「そうよ。だけどあえて自分がおばあちゃんになった姿で、過ごしてみたいって思う人はいないでしょうけどね」
  と言って李は笑った。


「あっはっ。ですよねえー。って言うか李さんは何故死んだ次点の姿と、このレトロな時代を選んだんですか?」
  と質問を更に掘り下げて聞くと


「ただ私が幼い頃に育った時代がこの昭和初期で、私自身がとても好きな時代だからよ」
  と李は答えた。


  そう言われて花梨は
「へー。そうなんですか」
  と言って納得した。


  そう言えば曾おばあちゃんがお腹に子供を身ごもった時、子供は双子だったらしい。名前は二人が生まれる前から有莉禾(ゆりか)と莉李花(りりか)に決めていたのだと言う。なんか漢字だけで見るとあまりピンとこないけれど、音(おん)読みだと「ゆりか」と「りりか」は名前の響きが良く似ている。


  まず姉である母の有莉禾が先に無事に生まれて、続いて生まれた母の妹の莉李花はなんと生まれてわずか5日で亡くなってしまったのだと言う。理由は解らないのだけれども、母の話だと多分元から妹の莉李花の寿命の長さがそれだけの期間しか生きられない運命だったんじゃないのかな?と言っていた。
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