セピア‐ため息の行方
――――――――――朧(おぼろ)げな記憶を手繰(たぐ)り寄せると花梨は徐々に、幼い頃に曾おじいちゃんに聞いたある出来事を鮮明に思い出した。


  その日は酷く蒸し暑い夏の日で部屋には独特お線香の匂いが漂い、そしてお坊さんの読経が聞こえていた。だから多分あれはお盆の時期だったと思う。


  ちなみにその頃の花梨はとってもおしゃまで、しかも好奇心が旺盛で何でも知りたがる時期だったから、仏壇に小さな位牌があったのを見つけた花梨はそれを不思議に思い、その位牌を手に取り曾おじいちゃんの目の前まで持って行って、『これなあに?』と無邪気に聞いたのだ。


  その時に曾おじいちゃんは『生まれてすぐに死んでしまった花梨のお母さんの妹だった莉李花と言う人の位牌だよ』と花梨に丁寧に説明をしてくれた。


  でもその頃の花梨はまだ小さかったからその意味が解らずに、ただ『ふーん?』って言っただけだった。


  もしかしてその莉李花さんもこの世界にいるのだろうか?いや待てよ。莉李花さんが死んだのは生まれたての赤ちゃんだった訳だから、う~んもし莉李花さんに出会えたとしても私には見分けがつかないか。などと取り留めのない事を花梨は思ったた――――――――――
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