セピア‐ため息の行方
  すると今度は斜め向こう側から歩いて来る若いカップルの方に目が吸い寄せられた。今度のカップルは女の人の方の目の瞳の部分が透けて見える。それは結構異様に映り花梨には気味が悪くさえ思える程だった。だから花梨は今更ながら自分のいるこのあやふやな状態と言うかこの世界にいる自分を思ってちょっぴり恐怖心さえ覚えた。


  だが自分の話を聞いて少し引き気味な花梨に対して、李は更に前から歩いて来る人達の特長を事細かく説明してくれた。


「あの女性はね。あの男の人よりもずっと年上なの。だから現世では人目に付いて会い難いから、あの人達は隠れて会いたいが為に、こうして此処に来てこっそりと逢瀬を続けているのよ。


  ちなみにこの生と死の狭間の世界ってね、自分が好きな時代にタイムトリップをする事が出来るのよ。でも此処へ来るには条件があるの。どの時代で過ごしても良んだけれど、その人は一つの肉体的機能を失ってしまうの。


< 55 / 291 >

この作品をシェア

pagetop