セピア‐ため息の行方
  李のそんな話を聞いて花梨は急に背筋がゾクっとするような感覚を覚えた。『では今の私の立場はいったい?』と花梨は今更ながらに言い知れない大きな不安感に襲われた。
  

  するとその花梨の不安を素早く察知したかのように李が口を開いた。
「さっきも私言ったと思うけれど人間にはその人を守るために何人かの守護霊って言うのが憑(つ)いているの。ちなみに私は花梨ちゃんに憑(つ)いているその守護霊の一人な訳。でもって今回花梨ちゃんが交通事故に遭(あ)ったって事自体はなんて事のない怪我だったの。でもね今回、花梨ちゃんはとっても心が病んでいたから、このまま元の世界にすんなりと還す訳にはいかなかったのよ」


「はあ……」


「だから花梨ちゃんにはこの世界での治療が必要だと思ったから、私自(みずか)ら敢(あ)えてこう言う形を取らせて頂いたの。花梨ちゃんには却(かえ)って迷惑だったかしら?」
  と李にそう言われて花梨は少し戸惑ってしまった。
< 57 / 291 >

この作品をシェア

pagetop