セピア‐ため息の行方
  やってあげたい事を出来ないまま死んで逝かざるを得なかった李はどんなにか辛い思いでこの世を去って逝った事だろうとそう思うと花梨はただただ胸が締め付けられる思いで一杯になった。多分その思いが花梨と李を引き合わせたのかも知れない。これは曾おじいちゃんの思いも幾分かはブレンドされている事なのだと思う。そう考えると花梨はそれ以上何も言えないような気がした。


「あのね、李さん私が驚いたのは人間って死んだら、もうその時点で全てが終わりなんだって私は漠然と考えていたんです。なのに李さんのように死んでも尚、こうして孫の為にと言う大義名分のもと必死で勉強をしてガイドスピリットの資格試験を受けると言うシステムがあると知ってなんか不思議な気がしたんです」
  としんみりとしながら花梨が言うと


「あっ、でもね死んだ人が誰でもこう言う立場になれるって言うものでもないのよ。その家族の隔世代でたった一人だけが選ばれてそう出来る脳力を授かるの。つまり倉橋家では私と孫のあなたが選ばれているの。泰造さんは言わばその予備軍の一人に過ぎないのよ。純粋な指名者は私とあなただけなの。だから花梨ちゃんの場合はつまりあなたの意思次第でこれからガイドスピリットになれる可能性があるって事なの。あなたはこれから現世に戻る立場でありながらスピリチァルの講義を受けて色々な事を身に付ける事によって、死んでしまっている私とはまた違った意味あいのガイドスピリットになれるのよ」
  とそう李は説明した。


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