セピア‐ため息の行方
  その伯母さんの名前を聞いて蛍子と言う名前はこの年代の名前としては結構珍しくて斬新(ざんしん)な名前なのでは?と花梨は思った。まあ、今日(きょうび)は雛子と言う名前も多いのだろうが、それでも雛子と言う名前も充分にこの時代らしさを醸(かも)し出している名前だなと花梨は思った。『いや待てよ。自分の名前の花梨や李さんの名前も同じ位に変わっている気もするな』と改めて思って、花梨はなんかとても可笑しくなってしまい一人でクスリと笑ってしまった。


  するとそれを少し訝(いぶか)しいと感じたのか
「いやあね。花梨ちゃんったら一人で何を笑っているの?」
  と李が少し怪訝(けげん)な顔をした。


「あのね。私、李さんに出会えて本当に良かったなあーって思っていたの。ちなみに私、曾おじいちゃんの奥さんである李さんがこうしてステキにやさしい女性でホントに良かったなあーとつくづく改めて思っていたんです」
  と花梨が咄嗟(とっさ)の苦し紛れにそう言うと

  
  李は
「もう大人をからかうものじゃありません」
  と言って照れてプクっと唇を尖(とが)らせては頬をポっとほんのり赤く染めた。
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