セピア‐ため息の行方
  要するにこの頃仕事が忙し過ぎて花梨は友達と一緒に旅行に行くとか、気の合う仲間同士での飲み会とかにも全く参加出来ないでいたのだ。その歪(ひず)みが積もり積もって花梨は一時的に鬱(うつ)状態に陥っていたのかも知れないなと、瞬時に自分自身の事を分析した。


  でもこの雛子の場合は少し花梨とは違う感じがした。心が少し疲れているだけのレベルではないのだ。自分自身の体を傷つけてリストカットを度々繰り返しては自殺未遂まがいの事を繰り返していると言うのは、もはや自分をとことん痛めつけて自分自身をも抹殺しようとさえ、していたのだから。


それにしても何故李は雛子と自分を引き合わせたのだろうか?と不思議に思った。李曰(いわく)花梨と雛子が仲良くなればきっと雛子は良い方に軌道修正出来るのではと?思ったからだと言う。そして花梨が本来持っているやさしく人を包み込む温かさが今の雛子には絶対的に必要不可欠なのだと言う事だった。だから李は年の離れた心の穏やかな花梨を雛子の元へと連れて来たと言うのだ。


  だが花梨の胸中は複雑だった。自分自身はどちらかと言うと姉に甘える妹タイプの性格だと自負していたからだ。だが花梨と雛子の年齢の差が7歳離れているのを雛子に会って確実に痛感した。何故ならやはり雛子は所詮高校生であり、花梨は大学生活を経て社会に出て働き始めて既に4年経過していたので、少なからず世間の荒波に揉まれているからだ。
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