Rain
「本條!」

私を呼ぶ声が聞こえて、振り返ってみると、そこには見覚えのある車が止まっていた

中から降りてきた先生はプライベートなのにも関わらず、髪はボサボサで眼鏡をかけていて、まるで、いつもの学校に来る時のスタイルだった

恐らく、朝起きてすぐ壱成さんのメールを見て、驚いて電話をしてきて、電話を切った後、慌てて着替えて、家を飛び出してきたというパターンなのだろう

でも、壱成さんはそんな先生を見て、大爆笑しながら言った

「おい、マジかよ!何だ、その格好!まさか、お前、それでいつも学校行ってんのか!?そりゃあ気持ち悪がられるって!逆に気持ち悪がらないで話してくれてる美雨ちゃんに感謝しろ!」

「…壱成……」

先生が、真剣な顔をして壱成さんの名前を呟くと、壱成さんは表情をさっきの優しい笑顔に戻し、言った

「…まぁ、とにかく、お前ら、ちゃんと話しろ。
じゃあ邪魔だろうし、俺は帰るから。
じゃあな」

「壱成、ありがとな!」

先生がそう言うと、壱成さんは私達を見て、ニカッと笑って言った

「本当に世話が焼けるよ!雪も、美雨ちゃんも!」


えっ、私まで?
そう思って苦笑する私とは裏腹に、先生は助手席のドアを開けながら言った

「こんな所じゃあ何だから、乗って」

…確かに教師である先生と、その教え子の私が、日曜日の朝から二人で、私の家の前で喋っているのを見られるのはマズイと思う

そう思った私は、先生に促されるまま、車に乗った
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