Rain
僕は、傘を持っていなかった

でも、大した雨じゃないし、走れば帰れると思った

そう思い、外に出ようとした時だった

「…雪?」

僕を呼ぶ声が聞こえて、振り返ってみると、そこには傘を持った美雨がいた

「どうしたの?傘ないの?だったらアタシの傘に入れてあげるよ?」

僕は、そう心配そうに言う美雨を見て、何故か、こんな言葉が口から出た

「別にいいよ。走れば大丈夫な程度だし………
それに……雨は嫌いじゃないんだ」

確かに、僕は雨が好きだった

一応、美大生だったし、美大生の僕からしたら、雨上がりの景色は、絵を描くのに最適だった

…雨上がりの木の葉っぱにはキラキラ輝く水滴がいくつも付いていて、雲の切れ間から目を細める程の太陽が射し込んで、いつも草木の影に隠れているカタツムリは嬉しそうに顔を表す―――

いつもと同じ場所でも、一気に、絵を描くのに最適なスポットに変わるんだ
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