Rain
「…手、出して……」

先生は、そう私の耳元で囁いた

後ろからそう言われて、ドキドキしながら手を出すと、袖を捲りそこにシュッとワンプッシュ香水をふりかけた

途端に私の周りは大好きな先生の匂いに包まれた

「……雪の匂い…」

私は、そう言って笑った

その匂いを嗅ぐと、自然と笑顔になった

私は、皆と違って、先生の使っている香水を知っている―――

小さな事だけれど、それだけでも、私は先生にとって、他の子達とは違う、特別な存在なんだって感じる事が出来て嬉しかった

「…これ、あげる」

先生はそう呟いて、たった今、私がつけてもらった香水を差し出してきた

「……えっ?でも雪の分が……」

「俺は、また買えば良いだけだし」

「……本当に良いの?」

「…ん……」

「…ありがとう」

そう言った私を、先生は再度抱き締めて、囁いた

「…何か、美雨から俺の匂いがすると、俺のものになったんだなぁって思う……」

「私は、雪のものだよ…」

「…ん……これからも、ずっと俺の側に居て……俺の太陽でいて……」

「…うん、私は、いなくならないよ……ずっと、雪の側にいる……」

私がそう言うと、先生は私にさっきよりも更に熱い、熱いキスをした

私は、先生の匂いに包まれながら、ただ夢中で、先生の舌に自分の舌を絡ませた






先生の珈琲の味と、私のダージリンの味が混ざった、甘くて、苦いキスだった―――…
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