Rain
そして、壱成はわざとらしく頭を掻きながら言った

「てか、これじゃあ居酒屋にした意味ねーじゃん!こういう湿っぽい話になりたくなかったから、わざわざ居酒屋にしたのに」

その言葉の意味が分からなくて、僕は首を傾げて壱成を見た
すると、壱成はぶっきらぼうに言った

「だって、お前が俺と会うの避けてたのって、勿論遠かったってのもあると思うけど、美雨の事、思い出すからだろ?だからさ、久々に会うのに、そんな湿っぽい話したくないなって」

僕は壱成のその言葉を聞いて驚いた
でも、冷静に考えたら、驚く事なんて全く無いんだ

壱成は昔からそうだった

何も考えていないようで、実は誰よりも色々な事を考えている

何も見ていないようで、実は人一倍、周りを見ている

そして、誰よりも優しいんだ









「…壱成、ありがとな」

僕が笑顔でそう言うと、壱成は照れたように頭を掻きながら「…おう」と言った

「それと壱成」

「ん?」

「俺より、お前の方がイケメンだよ」

僕が昔から、ずっと思っていた事だ

すぐに周りが見えなくなって、壱成や美雨に多大なる迷惑をかけていた僕よりも、周りに気を配れて、人の気持ちを考えられる壱成の方が何倍も出来てる人間だし、イケメンだと思う

でも、壱成は僕のその言葉を聞くと、悔しそうに「知ってるよ!」と言った。

それを聞いた僕は、可笑しくなって笑いながら言った

「本当だよ。俺が女なら間違いなくお前に惚れてたよ」

それを聞くと壱成はますます悔しそうに言った

「男に、んなこと言われても全く嬉しくねーわ!バカヤロー!」

それを聞いた僕はますます可笑しくなって大爆笑した





―――壱成


―――僕はお前と親友同士になれて、本当に良かったよ
< 97 / 324 >

この作品をシェア

pagetop