【空色の未来[海色の過去]】




プツッ…

イテッ




ピアスを1つ増やそうと市販のピアッサーで開けようとしたら、開ける場所を間違えて血管にさしちまった。




「あーあ、こりゃ傷残るね」



「ボケいすけ…」




静観してた夏樹が他人事のように言ってくるし、涼介は毒吐いてくるし…



ほんと、




「マジむかつく!」




イライラがどんどん沸きやがる



「はいはい保健室」



母親のように夏樹はティッシュで傷を押さえて俺に言った








ったくダリイ








俺と夏樹は保健室に向かった。







保健室の帰り夏樹はトイレに行くと言い俺は喉が乾いたから自販で炭酸買ってのんびり廊下で夏樹を待っていたら



知らねえ女が前から歩いてきた…






ッチ





俺は女が嫌いだ。

彼奴等は俺ら青龍に媚は売るしウゼエし

とりあえずその女が近づいてきたことに舌打ちが出た。




「ねえ、君」




「あ゛?」




話しかけんじゃねえよ


女だけど容赦なく殺気を出してやった




なのに女は



「理事長室まで案内してくれる?」




怖がるどころか無表情で俺に平然と話しかける。





何だよこいつ





「ハッ、何で俺が…」




何で恐がんねんだよ






「あっそ、なら別の人に聞く…」





ハッ?


何でこいつ媚びねんだよ

普通女は汚えやり方で誘ってくるだろ!!




すると用を済ました夏樹が丁度良いタイミングで来てくれた。








「おっ佳祐どした?また女子苛めてんのか?」



またじゃねえよ、前のときは女が勝手に告ってきて俺が降ったら泣き出したんだろ




良いこと思いついた…




「ちげえよ、この変な女が俺に媚び売ってくんだけど」




俺は女を軽蔑を含んだ目で見下ろした
だけどそれにも女は反応しない

マジなんなんだよっ、この女





「女なんてそんなもんだろ…?」




夏樹が過去の嫌な事を思い出してキレてる。



別にこの女は関係ねえけど、やっぱり女は信用できねえ。



すると目の前の女は呆れた顔をして
溜め息をついた…


そして次の瞬間、女が呟いた言葉に驚愕した。












「妄想はそこまでにしてくれる?」








俺は反射的に女を睨んだが言葉の意味を理解すると驚きすぎて言葉を失った。


同じく夏樹も女に一度は睨みをきかせたが直ぐに唖然とした顔つきになった。





「私は理事長室は何処かって聞いただけでしょ?
あんたたちに付き合っていられるほど暇じゃないの…」





そんな俺達に気にも止めず
女は続けて言いはなった



もう俺達はまさに開いた口が塞がらない状態だった


今目の前で本当に実際に起こってるのか疑いたくなるほど驚きまくってる。





「驚いたな…俺達に媚びてこねえ女なんて初めてだよ。」




まだ驚いてはいるものの少し嬉しそうな夏樹が女に話しかけた。






「それで…理事長室はどこ?」






女は俺に見向きもせず夏樹に話しかけさっさとこの場を離れたいとでも言うかのように先を急いでる。


こんな女…怪しいだろ…




夏樹は女を理事長室まで案内してやるそうだ



絶対怪しい…




ジー…




女は一瞬俺を見たが、それは一瞬のことで鬱陶しそうにまた無視し始めた





俺はイライラが募った…






だけど、


この女は他の奴とは少し違うって俺でも分かったから何となくくすぐったい気持ちになったのはばれてねえと思う。






「お前、名前は?」





………。



シカトかよっ


女はまるで聞こえて無いかのように完全無視してきた。



あーっ、イライラする…


すると一瞬また女は呆れた顔をした気がする




くそっ




夏樹の方を見ると肩を震わせて笑いをこらえていた。
あとで覚えてろよ~





「俺は夏樹、君の名前は何て言うの?」





夏樹は笑いがようやく収まった頃に
女に話しかけた。


その顔は好奇心で一杯の何かを期待した輝いてる眼だった。


驚いた…夏樹が女にこんな顔見せんの見たことねえ



女はおもむろに答えた。





「高橋 美緒」






「美緒ちゃんか、転校生だよね…」




「うん」




「分かんないことがあったら聞いてね」





「うん」




俺の勝手な想像だけどこいつは人を頼らねえと思う。
ただの勘だけどな





「こいつは佳祐、俺の親友だから仲良くしてやってよ…」




………。


また無視かよ




理事長室に行く間、夏樹は質問の嵐を送ったがそれにまともに女は答えていなかった…

てか聞いてねえ…



マジで変わってる…



だけど隣に女がいるのに俺の心には不快な感情は生まれなかった。

多分夏樹も一緒だ…





こいつの表情観察してて分かったこと、



一切こいつ笑わねえんだな
それに、無表情過ぎる











「ここだよ~」




夏樹がはしゃいだように理事長室のドアを指差した。


こいつマジで犬だな




俺の頭にあの有名な「名犬 パトラッシュ」
がよぎった。







「ここね」




「うん、ここが理事長室」




さっきからパトラッシュ夏樹は女が本当に気に入ったようでめちゃくちゃ目を輝かせている。

今にも尻尾が見えそうだ






「案内してくれてありがとう…」





女は初めて俺らに笑いかけた。
笑いかけたって言うか微笑んだんだが


その儚いような年相応に優しく笑う女を初めて綺麗だと思った。


自分の嫌いな女に綺麗だと思った自分に困惑した。



だけど凄え心臓が五月蝿(ウルサ)く暴れてるのに気がつくのと同時に


一気に顔に熱が集中する感覚が伝わった


「……。」




黙ったままの夏樹




「…べ、べつに…」




それしか口が開かねえ俺



隣を見ると夏樹は俺以上に茹で蛸(ユデダコ)みたいに赤くなっていた


女が気にせずドアに手をつけた瞬間



俺達は無意識に屋上に向かって全力で走った。







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