【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
「未菜、これ」
俺はそんな未菜にアイスを差し出す。
「わぁー!!!これ私好きなんだー!!
ありがとう!!!」
未菜はアイスを見て、俺の想像以上の反応を示した。
「うん。前に未菜が言ってたの覚えてたから」
「ヒューヒュー!!瑠星は本当、未菜ちゃんのことばかりだよね」
俺達の様子を見ていた翼がすかさず冷やかしてきた。
「翼煩いんだけど」
いい加減冷やかされるのにも慣れた。
「あっ、りゅーちゃん顔真っ赤!!」
けれど、いくら慣れたとは言えども顔は毎度毎度赤くなる。
本当...こればかりは仕方がのないこと。
だから、さっきから冷やかしてくる翼と未菜に顔が見えないよう顔を背けた。
そうすると俺の反応を面白がってか、背後からは未菜と翼の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「......さい......」
そんな中、微かに言葉が聞こえた。
その声は小さ過ぎて何を言ったのかは分からない。
けれど次の瞬間。
「...さい......うるさい!!!!!」
その場が一瞬で静かになった──
その声の主は紛れもなく千沙ちゃんで、普段の千沙ちゃんからは想像出来ない声の大きさ。
この状況に訳が分からなくなり、俺達3人はただ漠然と佇み、耳を塞ぎ下を向く千沙ちゃんを眺めることしか出来なかった。
そんな千沙ちゃんの足元には、アイスが溶けて落ちていた──