【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
「眠ってるわよ。ちょっと待ってね、今起こすから」
「いや!!...大丈夫です...」
咄嗟に出た声が意外にも大きかった。
そしてその声が原因で、カーテンの閉まっているベッドの方から声がした。
「...んん......保健室...?」
やばい、やばい、やばい。
「あ、お、俺は鞄届けに来ただけなんで!それじゃ」
俺は慌てて保健室から飛び出した。
ドクン、ドクン──
心臓が煩い。
「...はぁ...ビックリした...」
安心したのもつかの間、保健室の方からドアが開く音が聞こえた。
しかも走っている足音も聞こえる。
多分...未菜だ。
俺は咄嗟に物陰に隠れた。
息を潜めて隠れていれば、次第に足音はどんどん大きくなり近づいてくる。
ドクン、ドクン──
その足音は俺のそばで止まった...
バレ...た?
「......須藤...先輩......どこ...」
未菜はポツリと言葉を零した。
俺のことを探しているのに、すぐそばにいるのに、俺は未菜の前に姿を現すことが出来ない。
そんな状況に、ただただ拳を強く握りしめるしかなかった。