【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
こんな時に…あと1回勝てば全道大会出場が決まるというのに。
ここで怪我のことを言ったら…殆どの確率で次の試合は棄権だ。
だから俺はみんなの前で平然を装った。
試合後のアドレナリンが減っていく今となれば、足に激痛しか走らず、歩く度顔が思わず歪んでしまうほど痛い。
そんな状態でさすがに長沢達と同じスピードで歩くのは無理だ。
「…悪い、僕ちょっとベンチに忘れ物したから先に行ってて」
激痛に堪えながらも必死に笑顔を作る。
「おう!」
長沢達は俺の嘘に気付かずスタスタと歩いて行った。
だけど、ただ1人未菜だけは…俺のことを複雑な表情で見ていた。
そんな未菜から視線をわざとそらし、早くこの場から立ち去るよう促す。
そうすれば、未菜は先を行った。
俺は痛い足を引きずりながら、人がいない方へと向かう。
少し先には小さな公園がある。
そこで俺は常に持ち歩いていた、テーピングを足に巻き付けガチガチに固定した。
これなら。きっと大丈夫。
誰にも迷惑かけない。
その時、
「やっぱり…」
背後から声がした。
振り向けばそこには未菜の姿。