【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
この姿を見られたんだ。
…なにか言い訳をしなくちゃ。
「あっ、と…僕テーピング巻くと気合いが入るんだぁ…」
戸惑いを隠しきれない頭で考えた言い訳は、意味の分からないもの。
こんなんじゃ、怪我してますよ。って言ってるようなもんだろ。
「…須藤…先輩って…やっぱり素直ですね」
そう言った未菜の顔は曇っていた。
今にも泣きそうな顔。
だけど、なにが原因でそんな顔をさせているのか俺にはさっぱり分からなかった。
「…怪我…してるんですよね?それもかなり酷いやつ」
「してない」
ここで素直に認めるわけにもいかない。
長沢に迷惑がかかる。
俺の唯一の居場所が消えてなくなってしまう。
「…じゃあ…触りますね?」
未菜はそう言うと俺の足に手を伸ばした。
「やめろ!!」
手はギリギリの所で止められていた。
「先輩嘘つかないでください。怪我…してますよね?」
未菜には全部バレてるんだ。
ここで嘘をつくのにも限界がある…
俺は静かに頷いた。
そして、俺は未菜に必死に頼んだ。
このことを内緒にしていてくれと。