【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
その言葉から、俺達には再び沈黙が続いた。
だけど、その沈黙はどこか暖かい。
テニスコートに戻れば、部員、先生、マネージャー全員が俺の心配をしていた。
トンッ──
長沢は俺に歩み寄ると、胸に軽く拳を当てた。
「長沢...」
「大丈夫だって、仕方がないって言ったけど...諦めた訳じゃないから。来年、絶対俺を全道に連れて行けよな」
長沢は俺のことを真っ直ぐ見て言ったあと、とびっきりの笑顔で笑った。
俺のペアが長沢でよかった。
こんな仲間思いのやつなんてそうそういない。
「絶対連れてってやる」
笑顔で約束を交わした。
俺はもっと人を信じていいのかもしれない──
自分で作った壁が少しずつ壊れていく音がした。