【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
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試合後、キミの言葉が引っかかった。
『…悪い、僕ちょっとベンチに忘れ物したから先に行ってて』
だから私はこっそりと後をつけた。
そしたら案の定キミは嘘をついていた。
記憶が戻った今、必要以上に関わるのはどうなのかと思う。
でも、どうしても見過ごすわけにはいかず何も知らない、何も覚えていない私を演じて彼の前に姿を現した。
キミは必死に怪我のことを内緒にするよう頼んできた。
唯一自分が役に立つ場所。
唯一自分が存在していい場所。
誰にも迷惑を掛けたくない。
人の夢を奪いたくない。
キミはそう言った。
きっとなにも知らない私だったのなら、
「そんなことないですよ」
なんて声でも掛けるのだろう。
項垂れてるキミを励ます声を掛けるだろう。
でも、今の私にはそんなこと口が裂けても言えない。
全部、私のせいだから。
私がキミを苦しめているから。