【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
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大会が終わって、私は1人誰もいないテニスコートをしばらく眺めていた。
目を閉じれば沢山の思い出が息をするように現れる。
そして、その光景に涙をただただ流す。
りゅーちゃんとの思い出はどれも温かくて、私とりゅーちゃんの思い出なのに...その思い出はバラバラで、私達の思い出が交わることはない。
「...はぁ......」
重たいため息が出てしまう。
「ねぇ」
その時、突然後ろから声を掛けられた。
てっきり誰もいないと思っていたから、驚きのあまり泣いていたことなんて忘れて振り返ってしまった。
「とっち...なしているの?帰ったんじゃ?!」
部員、ましてやテニスコートには人1人見かけない。
「バカ未菜。お前を心配してたんだよ」
「......心配...?」
私とっちに心配してもらうようなことなにもない気が...
「...はぁ...本当バカ。俺のこと舐めないでよね」
「とっち?」
「悩んでるんでしょ。落ち込んでるんでしょ。泣いてたんでしょ」
「なっ...!!」
なんで、なんで分かるの?
私そんなバレバレだった?
「ずっと未菜のことだけ見てきたんだから、未菜のことはすぐに分かるよ」
これが幼なじみの力ってやつ?
だとしたら...
「...とっちには適わないや」