【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
そんな私にとっちは、
「俺は未菜を1人にさせないから」
突然真剣な顔つきで言った。
「未菜が苦しい時、少しでも支えになりたいよ」
とっちは優しい言葉で私を包み込んだ。
「......私ね...高校生の記憶がなかったの」
こんなこと誰にも話さないつもりだった。
だけど、とっちには話しておきたかった。
誰かに私の胸中を知っていて欲しかったのかもしれない。
私は静かに今までの出来事を全て話した。
そんな私の話をとっちは静かに聞いてくれて、時折切なそうに、悲しそうに、泣きそうに、眉をひそめていた。
「でも...今日、全部思い出した。全部、全部。なにもかも」
あんなに思い出したかった記憶。
だけど、私もとっちも素直に喜べない。
「......」
私はニコッと微笑んだ。
きっと笑顔なんて部類に入らないほど、苦しい顔だと思う。
それでも私は微笑んだ。
「私は、記憶が今も戻らないフリをする」
それは同時に過去を捨てること。