【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
とっちの視線の先を見ると、そこにはりゅーちゃんの姿があった。
「こ、こんにちは!」
「ん」
とっちはとりあえず挨拶をしたが、顔は強ばっている。
そして私の方を不安気に見ていた。
「...こんにちは」
ここで私が挨拶しないのはおかしくて、声が喉につっかかりながらも挨拶をするが、やっぱり私の挨拶に対しては無視だった。
ドキン...ドキン──
心臓が煩く鳴り響く。
3人が鉢合わせたのは、これが初めて。
千沙を盗み見れば、下唇を噛んで下を向いているし。
りゅーちゃんを見れば眉をひそめてなにかに耐えているように見えた。
ここで私はなにも言えない。
なにも出来ない。
私が...私が関係を歪ませたのに。
私がみんなを傷つけたのに。
私はみんなを傷つけるばかりで、救うことなんて出来なくて。
みんなを救いたいのに、救えなくて。
傷つけたくないのに、傷つけてしまって。
自分の不甲斐なさに泣きそうになる。
けれど、こんな私に泣く資格はないから、必死に涙がこぼれ落ちないように堪える。
その時、
「あ!そうだそうだ!」
とっちがいきなり大きな声を出した。