【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
俺はそれから千沙ちゃんを攻めることなくその場を立ち去った。
前夜祭が始まった賑やかなグラウンドには行く気がせず、屋上へと足を向ける。
屋上に着くと暫くしてから花火が上がった。
花火を見るとどうしてもあの日の花火大会のことを思い出してしまう。
1人でひたすら待ち続け、約束を破られたと思った日。
俺が大切な人を信じれなかった日。
俺が大切な人を手放してしまった日。
もしもタイムマシーンがあるなら...
もしも過去に戻ることが出来るなら...
あの日に戻りたい。
次はどんなことでも信じてみせる。
なんとしてでもキミの手を離さない。
だけどそれは不可能なこと。
その事実は分かっているのに、どうしても願ってしまう。
「......未菜の中に...俺はいるのかな...」
その時、
「...りゅーちゃん」
懐かしい呼び方で呼ばれた──