【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜
〝須藤先輩〟か…
余所余所しい呼び方。
もう〝りゅーちゃん〟って呼ばれることは無いんだと思うと…
この場から逃げ出したくなる。
俺の記憶が無い未菜と話すなんて嫌で…
いっそのこと無視してしまおうかとさえ思う。
けど…
「…先輩っ……」
未菜にとっての俺は初対面の赤の他人。
そんなヤツに勇気を出して話し掛けているんだと思うと無視なんて出来ないよ。
俺はゆっくりと顔を上げた。
それと同時に涙目になっている未菜の顔が見える。
今すぐにでも抱きしめたい。
頭を撫でてやりたい。
「なに?」
けど、今の俺には許されないこと。
俺は、自分の気持ちを隠すように……睨み、冷たく言葉を放った。