彼は藤娘
「美女と美丈夫と天使……あきらけいこにはそう見えるんだ。」
セルジュが天使のように笑ってくれた。
「美丈夫って俺?はじめて言われた。イケメンとかハンサムとか色々言われるけど、びじょうふ……。」
竹原くんは言葉の響きがおかしいらしく、何度も美丈夫、美丈夫と言いながら笑ってる。
……2人とも「美女」には突っ込まないのね……それは妥当なんや……へ~。
「お友達って言っても、学校めっちゃ離れてるし、忙しいし、何も関われへんよ?……遥香と違って、夜遊びも無理やし。」
自分が何を求められてるのか、よくわからない。
わからないけれど、遥香と竹原くんが似合ってないように、この人たちと私の組み合わせは変。
私自身、劣等感で卑屈になるほうではないけど、せいぜい十人並みの容姿は自覚している。
彩乃くんのことは見ていたいけど、その隣に立つとか、おこがましすぎる気がする。
ぷるぷると首を振ってもう一度言った。
「やっぱ、無理。」
竹原くんは、足を組んで椅子の背もたれに体重をかけて、反りかえった。
「そうか~。彩乃、かわいそうやな。心を乱されたまま見捨てられるんや。」
心を乱す?
誰が?
「あいつは、あきちゃんを気に入ってる。それは間違いないと思う。せやないと、あんな顔見せんわ。」
あんな顔……あの優しい顔?
「僕はその場に居合わせなかったけど、義人から話を聞いた限り、あきらけいこは彩乃が好きで、彩乃もあきらけいこに好意的。でも2人とも不器用。」
そう言って、セルジュは天使そのものの神々しい笑顔で続けた。
「このままフェードアウトさせるには惜しいから、せめて当分キープさせてよ。」
キープ!
それで、友達?
「私が彩乃くんを好きなことも不器用なことも認める。……でも彩乃くんは単に私に呆れたか憐れに思わはったように感じたけど。」
私がそう言うと、竹原くんは手を振った。
「あいつが他人に呆れた時は、周囲が凍りつくぐらい冷たい目で見よるわ。ま、彩乃の言動の解釈は俺らに任せて、あきちゃんは恋愛初心者らしくそのままでいたらいいし。」
「恋愛初心者……」
憮然として繰り返したけど、否定できない。
「彩乃もそうだよね?浮いた話一度もないし。お似合いだよ。」
きゃーっ!!!ひどいっ!
「天使に笑顔でそんな風に言われたら、私、自惚(うぬぼ)れてその気になってしまうやんかっ!やめてーっ!」
私は耳をふさいでうずくまった。
顔が熱い。
「あ。来たよ、美女が。」
「……誰が美女やねん。」
確かに冷た~い声でそう言いながら、彩乃くんがこっちへ近づいてきた。
「義人。ちょ~、聞きたいことが……」
そこまで言って、彩乃くんはしゃがみこんでる私に気づいたようだ。
目が合う。
自分がますます赤くなるのを感じる。
た、助けて……くれるわけないよね、この2人が。
おもしろがって見てるだけ、に違いない。
しばらく、時が止まる。
……彩乃くんの目が一瞬柔らかい笑みを含み、また、影を落とした……ような気がする。
「大丈夫か?」
へ?
彩乃くんは、心配そうにハンカチを差し出してくれた。
セルジュが天使のように笑ってくれた。
「美丈夫って俺?はじめて言われた。イケメンとかハンサムとか色々言われるけど、びじょうふ……。」
竹原くんは言葉の響きがおかしいらしく、何度も美丈夫、美丈夫と言いながら笑ってる。
……2人とも「美女」には突っ込まないのね……それは妥当なんや……へ~。
「お友達って言っても、学校めっちゃ離れてるし、忙しいし、何も関われへんよ?……遥香と違って、夜遊びも無理やし。」
自分が何を求められてるのか、よくわからない。
わからないけれど、遥香と竹原くんが似合ってないように、この人たちと私の組み合わせは変。
私自身、劣等感で卑屈になるほうではないけど、せいぜい十人並みの容姿は自覚している。
彩乃くんのことは見ていたいけど、その隣に立つとか、おこがましすぎる気がする。
ぷるぷると首を振ってもう一度言った。
「やっぱ、無理。」
竹原くんは、足を組んで椅子の背もたれに体重をかけて、反りかえった。
「そうか~。彩乃、かわいそうやな。心を乱されたまま見捨てられるんや。」
心を乱す?
誰が?
「あいつは、あきちゃんを気に入ってる。それは間違いないと思う。せやないと、あんな顔見せんわ。」
あんな顔……あの優しい顔?
「僕はその場に居合わせなかったけど、義人から話を聞いた限り、あきらけいこは彩乃が好きで、彩乃もあきらけいこに好意的。でも2人とも不器用。」
そう言って、セルジュは天使そのものの神々しい笑顔で続けた。
「このままフェードアウトさせるには惜しいから、せめて当分キープさせてよ。」
キープ!
それで、友達?
「私が彩乃くんを好きなことも不器用なことも認める。……でも彩乃くんは単に私に呆れたか憐れに思わはったように感じたけど。」
私がそう言うと、竹原くんは手を振った。
「あいつが他人に呆れた時は、周囲が凍りつくぐらい冷たい目で見よるわ。ま、彩乃の言動の解釈は俺らに任せて、あきちゃんは恋愛初心者らしくそのままでいたらいいし。」
「恋愛初心者……」
憮然として繰り返したけど、否定できない。
「彩乃もそうだよね?浮いた話一度もないし。お似合いだよ。」
きゃーっ!!!ひどいっ!
「天使に笑顔でそんな風に言われたら、私、自惚(うぬぼ)れてその気になってしまうやんかっ!やめてーっ!」
私は耳をふさいでうずくまった。
顔が熱い。
「あ。来たよ、美女が。」
「……誰が美女やねん。」
確かに冷た~い声でそう言いながら、彩乃くんがこっちへ近づいてきた。
「義人。ちょ~、聞きたいことが……」
そこまで言って、彩乃くんはしゃがみこんでる私に気づいたようだ。
目が合う。
自分がますます赤くなるのを感じる。
た、助けて……くれるわけないよね、この2人が。
おもしろがって見てるだけ、に違いない。
しばらく、時が止まる。
……彩乃くんの目が一瞬柔らかい笑みを含み、また、影を落とした……ような気がする。
「大丈夫か?」
へ?
彩乃くんは、心配そうにハンカチを差し出してくれた。