*幸せ*
「柚木さん、どうなされたのですか?」


扉の向こう。



早苗の声が聴こえてくる。


「早苗、ごめんなさい。今日は体調が優れないみたいなの。」


さらさらと口から嘘が溢れる。


ほんとは、朝扉を私が開けてそこに立つ蓮が嫌になっただけで。


『おはよう、柚木。』


今日は、いつも通りの朝じゃない。


いつもと違って、


胸が痛いだけ。


枯れたはずの涙はまた出てくるだけ。


頭の奥からあの雨音が聴こえてくるだけ。


「分かりました、学校には私がさせていただきます。」


早苗の声は自棄に遠い。

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