Returns *リターンズ*
「ひどいよねぇ、私。自分の事しか
考えてなくて。友達がそんな辛い思いして
亡くなってたかと思うと、つらく…」
グッと右腕を引っ張られ、
まりちゃんの腕の中にすっぽり包まれた。
「でも昨日藤倉と会ったって事は、この先
自殺はしないって事だろ?お前は友達の命を
救ったんだよ。お前が助けたんだよ。」
まりちゃんの学ランがシミだらけになる程、
私は涙を流した。
私が助けた───…。そう思っていいのかな。
まりちゃんが大丈夫だって言うんだから、
そうなのかもしれない。
まりちゃんは、前のバスの中みたいに
頭をぽんぽんしてくれた。
「ごめん、まりちゃんの制服汚れちゃったね」
「汚れたら洗えばいい。やり直しはきく。」
やり直し…か。
やり直しがきく事なら、何度だって頑張れる。
でも、直せない状態になってしまったら
もうどうしようもない。
助ける事ができた──、そう思う様にしよう。
「暗くなってきたな。そろそろ帰るか。」