Returns *リターンズ*
「藤倉、下ばかり向くな。」
私は今、まりちゃんと一緒に、
風香ちゃんの墓前へ来ていた。
風香ちゃんが亡くなり、お父さんの実家のある
この街で葬儀を済ませたそうだ。
そしてお父さんの実家のお墓に、
風香ちゃんは眠っている。
お墓を後にし、お父さんの待つ実家へ
足を運んだ。
「藤倉さん、遠い所まで来てくれて本当にありがとう。風香と仲良くしてくれてありがとう。」
遺影の中の風香ちゃんはニコリともせず、
肩に力が入ったような緊張した顔をしている。
「写真すらなくてね。学校の、生徒手帳用に
撮ったもので作ったんだ。もう少し笑顔の写真が
あればよかったんだけどね。」
風香ちゃんのお父さんが力なく笑う。
「風香には、本当に辛い目に合わせてばかりで…
私も仕事ばかりで、 家の事はほったらかしでね。
ここ最近は風香と話す事もほとんどなくて、娘が
どんな気持ちでいるのかも分かろうとしなかった
それでこんな事になって…。少しでも娘の気持ち
を理解したいと、机の中の整理をした時にこれを
見つけたんだ。」
そう言ってお父さんが差し出したのは、
ハガキサイズ程の大学ノート。
「誰にも心の内をさらけ出せない分、
ここに綴っていたようなんだ。」
ノートを受け取り、ペラペラとめくる。
最初の方のページは、文字数も少ない。