Returns *リターンズ*

電車を乗り継ぎ、風香ちゃんの眠るお墓まで

行く時も、風香ちゃんのお父さんの実家へ

寄らせてもらい話をした時も、まりちゃんは

ずっと私の手を握っていてくれた。



涙が溢れ、辛くてたまらなくなると、

ぎゅっと強く握ってくれた。



この手がなかったら、

私は今日一日耐えられなかっただろう。



帰りの電車の中でも、

その手は握られたままだった。



お父さんに会い、思いを知り、

気持ちもだいぶ落ち着いてきて、

まりちゃんの手の温かさを改めて実感した。



「まりちゃん、お腹すいた。」

「おう。」


「まりちゃん、のど乾いた。」

「おう。」


「まりちゃん、…ありがとう。」

「…おう。」




握られた手をじーっと見つめる。



あー、まりちゃんの手っておっきいんだ。

あー、人の手ってこんなにあったかいんだ。

あー、ぬくもりってこうやって感じるんだ。



握られた手に力をこめ、ぎゅっとする。



そしたらまりちゃんが、もっと力をこめて

握り返してきた。



「いったぁー!まりちゃん力強すぎだって!」


「やっと笑ったな。笑えよ、藤倉。」



まりちゃん、ありがとう。


まりちゃんがいてくれなかったら、

私この辛さを乗り越えられなかったよ。



「電車降りたら何か食うか。」

「うん!」



その手は、その後もずっとずっと

繋がったままだった。



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