オフィス・ラブ #∞【SS集】
「新庄さん、お客様です」
マドンナが、受話器を掲げて彼に呼びかけました。
やったあ、この隙に次の会議室に逃げちゃおう。
そう思ったのはすぐにバレたらしく、彼がじろりと私をにらみます。
「すぐ行く。それと、大塚」
「はい」
「課長がこの書類を読み終わられるまで、ここにいてくれ」
はい、とにこりと笑って、電話を置いた彼女が私の席にやって来ます。
ああもう、この子たちは。
右往左往した企画のおかげで、急きょ組むことになったこのふたりは、予想を超えて、いいコンビワークを発揮してくれました。
大塚さんは、彼の仕切りや交渉術をぐんぐんと吸収し、新庄君は、ほんの少し他人行儀に接していた女性の部下に、いざ近づいてみたことで、何か彼なりにぴんと来た様子。
こんなことなら、もっと早く組ませてあげればよかった。
でも、彼女が子分として同じ方向に育つと怖いので、このくらいでよかったのかもしれません。
真面目な彼女は、本当に私の席の前に立ったまま、手元で仕事をしています。
あーあ。