オフィス・ラブ #∞【SS集】
「舞ちゃん、しっかり者で、頼もしいですね」
「母親に似てきて、困ってるよ」
「魅力的ってこと?」
お母さんと、凛ちゃんたちのパパママの声が聞こえる。
私は火の通った肉と野菜をお皿にとって、大人たちの囲むテーブルに持っていった。
「はい、第一陣、めしあがれ」
香ばしく焼けたバーベキューの具たちは、我ながら食欲をそそる出来で、思ったとおり大人たちは歓声を上げた。
おつかれ、とお父さんが頭をなでてくれる。
私もう、4年生なんだけど。
「由宇、次も焼けてるぞ」
お兄ちゃんが、最近声変わりした、出しづらそうな声で呼ぶ。
私はまたグリルに戻って、さっきと同じことをした。
野菜を洗い終わった凛ちゃんは、手持ちぶさたにお兄ちゃんの手元をのぞきこんでいる。
お兄ちゃんは邪魔そうに、たまにそれをひじで払いのける。
このふたりは、中学は違うけど、同い年なのだ。
舞ちゃんは、その2つ上の3年生。
パパにそっくりの明るい色の髪がさらっとしてて、綺麗で頭もいい。
受験生なのに、こうして夏休みを親と過ごしてるなんて、すごい余裕。
「ひと段落したら、こっちで一緒に食べよ」
「はあい」
凛ちゃんママが声をかけてくれて、さすがに少しくたびれていた私たちは、一斉に返事をした。
舞ちゃんが手早く全部切ってくれた野菜を、ざるに盛り、まな板と包丁を洗う。
肉にはラップをかけて、焼けている具たちを全部お皿に盛って、とりあえずテーブルにつくことにした。