オフィス・ラブ #∞【SS集】
好きな相手をいじめなくて、いったい誰をいじめるっていうわけ?
「もういいでしょ、彩」
「でね、その総務の山本くんていうのが、恵利を大好きでですね」
聞いてます? と彩が言うのに、新庄が、すごく聞いてる、とうなずいた。
春の柔らかな日差しの下、ガーデンテーブルにかけた4人は、昼間からアルコールを手にしている。
「総務の山本くんって、前にうちのフロアのレイアウト変更を担当してくれた子だよね」
「堤さん!」
かき回すつもりで余計な情報を提供すると、予想どおり大塚が悲鳴のような声を上げた。
へえ、と新庄が面白がるように身を乗り出す。
可愛いねえ、と堤は笑った。
本当に、可愛い。
いい声だな、こいつ。
初めての印象は、それだった。
別に、自分の声に不満があるわけじゃないけれど。
たとえば少し広い会議室でプレゼンなんかをする場合には、こういう、張りのある、よく通る声のほうが断然有利だ。
新庄だ、とそいつは快活に名乗った。