オフィス・ラブ #∞【SS集】
「家では、どんな感じなの?」
「裸とか、見るわけ?」
「お風呂一緒に入ったり、しないの?」
黄色い声が上がるのを、アホかと思いつつ聞いた。
家でもあのまんまだし、パンツ一丁くらいなら毎日見てるけど、素っ裸は小学校の途中から、さすがに見ていない。
私だって当然、見せていない。
せいぜい、お風呂上がりにパンツとTシャツで室内をうろつくくらいで、それだって貴志はあからさまに嫌な顔をする。
一緒になんか、入るわけないだろ。
あんたたちは、お兄ちゃんと入ってるわけ?
それと同じよ。
なんで双子だからって、ベッタリ特別な関係だと思われなきゃいけないんだろう。
ただの兄だよ、たまたま同じ学年にいるってだけで。
同じクラスになるなり、さっそく話しかけてきたクラスメイトに囲まれて、あーあとため息をついた。
小学校の頃は、お前らデキてるんだろ的な愚にもつかないからかいで済んだ。
あまりにしつこい奴は、貴志が黙らせてくれた。
中学は小学校からの持ちあがりなので、みんないじり飽きていて、ほとんど何も言われなかった。
高校に入ったら、中学の頃はひそやかだった向こうの人気がドカンと爆発して、私は完全にとばっちりを受けていた。
リサーチに私を使う子、告白に私を使う子、果ては、家に上がるために私と仲よくなろうとする子。
もうちょっと程度のいい学校かと思っていたのに、案外バカ女ってのは、一定の率でどこにでも存在するらしい。
それもこれも、みんな兄のせいだ。
いや、彼も彼なりに、大変なんだろうけど。