オフィス・ラブ #∞【SS集】
期間が短すぎたので、たぶん貴志を含め誰も知らないだろうけど、米倉先輩と私は、一瞬つきあっていた。


サッカー部の副キャプテンで、見た目は清潔でさっぱりと陽気。

ごくまれにプロ選手も輩出したりするうちのサッカー部にしては、髪を明るくしていたりと、少し自由ではあったけれど。

話し上手で、いかにも女の子に人気のありそうな、ほがらかで親しみやすいタイプだ。


けどまあ、一皮めくってみれば、初物大好きの、ただの我慢の利かないサル野郎で。

春に告白してくれた人と少しつきあって、おとなしすぎる彼にちょっと物足りなくなった私は、米倉先輩に誘われたのを機に乗り換え、まあ、さっさと食われ、その後、愛想を尽かしてすぐ別れた。

それは別に、私も軽いノリだったのでいいんだけど。


問題は、米倉先輩の目的が、最初から貴志にあったことだ。


同じく春に、貴志に告白して嘘とも本当ともつかない言い訳で断られた例の彼女が、米倉先輩の大親友の妹だったらしい。

前から生意気と思っていた新庄に、ここらでちょいと痛い目を見せてやろうと米倉先輩が目をつけたのが、私だった。


サッカー部だけあって、私たちが仲のいい兄妹、という情報を持っていたんだろう。

要は私を引っかけて、ちょっといただき、手ひどく振るか何かして、それを貴志に自慢でもしてやれば、貴志もあんな適当に女の子を振ったことを後悔するだろうと。

そんな考えだったらしかった。


ちなみにこれは、私が別れたいと言った時、米倉先輩が全部教えてくれたこと。

私が先輩に未練をなくした時点で、その作戦は崩れ去ったも同然なので、あてつけ半分に打ち明けたらしい。

へー、ない頭でもいろいろ考えんのね、失敗に終わってご愁傷様、くらいにしかその時は思わなかった。


それが先月の話。


おそらく貴志は、それをどこからか。

というより十中八九、米倉先輩本人から、聞いたに違いない。



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