オフィス・ラブ #∞【SS集】
貴志の傷は、場所がさいわいしてあまり目立たずに済み、半年もたつとだいぶ生々しさも消えた。
米倉先輩も肩身が狭そうに卒業していき、私たちは3年になり、私は例によって、ミーハーな女の子たちの質問攻めを受け。
結局貴志は、宣言どおり、彼女をつくらないまま高校生活を終える気らしかった。
ふたりで暮らすなら私も実家を出ていいという父の言葉に、ひとり暮らしの気満々だった貴志は珍しく、隠すこともなくふくれ。
そんな貴志に、父親がぴしりと言った。
「この俺が、絵里をお前に預けるって頼みにしてんのに、どこに文句がある」
武骨な父は、実は貴志を操るのが相当にうまい。
貴志は悔しそうに押し黙って、内心で快哉を叫ぶ私をじろりとにらんだ。
そんなふうに始まりは、したものの。
なんだかんだ、ふたり暮らしは順調で。
だけど、そこからの貴志の無節操っぷりは、実妹の私ですらあぜんとするほどで。
自慢の兄だけど、男としては正直どうなんだろうと、しばしば首をかしげることになるんだけど。
まあ、それはまた、別の話。
Fin.
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thanks : アリソン様/ゆ様