オフィス・ラブ #∞【SS集】
関係者全員がそろい、営業さんと三ツ谷さんが報告書の内容を説明しはじめる。

私はそれを遠くに聞きながら、思考にふけっていた。


つまり向こうは、うまくいきそうにないわけだ。

彼の、これまでの言動から察するに、その彼女というのは、さぞ可愛らしく女性らしい人なんだろう。

私と違って。


けど、うまくいきそうにないわけだ。



ねえ、比央麗。



たまには、いろいろなもの捨てて、頑張ってみたら。

はめられた型に、自らおさまって楽してないで、こんな時くらい、ほしいものに手を伸ばしてみたら。


最後に勇気を出したのは、いつだった?

何がそんなに、ためらわせるの。

見栄? 羞恥? 自尊心?


捨てたら彼に、もっと近づけるのかもしれないんだよ。

それを考えたら。


そんなもの、なんだっていうのよ?





「あれっ、真野ちゃん、可愛い」



新庄さんが、出社するなり私の髪を綺麗な指でさらりとすくった。



「雰囲気がぐっと柔らかくなるね。髪も綺麗だから、すっごくいい」

「ありがとうございます」



素直にお礼を言うと、彼女がにこりと笑む。

< 177 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop