オフィス・ラブ #∞【SS集】
あ、そういうことか。
地下鉄の駅へ下りる階段で、数か月前に別れた小さな元恋人と、彼が並んでいるのを見た時。
ふたりの間に、いったいどんなつながりがあったのかと驚きながらも、その関係は瞬時に理解した。
堤が、奥歯にものがはさまったような言いかただったのも、うなずける。
そういうことだったのか。
かわいそうに、彩はすっかり動揺し、うろたえている様子で。
いいんだよ、と言ってあげたくなった。
いいんだよ、彩。
言っちゃうと、俺ももう、別の女の子と寝たし。
覚えてないけど。
楽しかったねって言っただろ。
うん、って彩も返事しただろ。
それで、いいんだよ。
それ以上、何が必要なの。
あれで、終わったんだよ。
彩はもう、誰と何をしてもいいんだ。
俺に申し訳ながる必要なんて、どこにもないんだ。
いいんだよ、彩。