オフィス・ラブ #∞【SS集】
部屋のキーをエントランスのセンサーにかざしながら、会いたいなどと軽率に言ったことを後悔した。
一から今の気分を説明するには、気力が不足しているし。
それ以外の話をできるほど、今の自分には余裕がない。
吐き出す方法なんて、ひとつしか知らなくて。
結局は、そのためだけに呼んだと思われても仕方がなかった。
モニタ用のカメラがあることを承知のうえで、エレベータに乗りこむなりキスをする。
柔らかい肌触りのカーディガンを肩から脱がすと、彼女が下着をつけていないことがわかり、ちょっと、と頭をはたかれた。
本当に、とるものもとりあえず、飛んで来てくれたんだ。
「可愛い元恋人と、何かあったの」
そんなことを言われたのに、驚いた。
自分は、そんなことまで話したのか。
「この間と、同じ顔してるわよ」
「…そうなんだ?」
まだ忘れたままなのね、とあきれたようにため息をつく。
まったく飾り気のないその姿は、かえって彼女の芯の強さと寛容さを強調しているようで。
ああ、もしかして、と思った。
もしかしたら、あの日も。
自分はこんなふうに、彼女に甘えさせてもらったのかもしれない。
寝室のベッドに倒れこみ、慌ただしく服を脱がせて抱きしめる。
少し落ち着いたら、という彼女のあきれ声は、聞こえないふりをした。
あやすように首を抱いてくれる彼女のぬくもりは、深い息が漏れるほど、大森を安心させてくれたけれど。
やっぱり記憶はよみがえらず、何もかもが初めての感覚だった。
「まだ思い出さないの?」
「うん、ごめん」
「何が、ごめんなの」
「どこが気持ちいいか、覚えてない」
一から今の気分を説明するには、気力が不足しているし。
それ以外の話をできるほど、今の自分には余裕がない。
吐き出す方法なんて、ひとつしか知らなくて。
結局は、そのためだけに呼んだと思われても仕方がなかった。
モニタ用のカメラがあることを承知のうえで、エレベータに乗りこむなりキスをする。
柔らかい肌触りのカーディガンを肩から脱がすと、彼女が下着をつけていないことがわかり、ちょっと、と頭をはたかれた。
本当に、とるものもとりあえず、飛んで来てくれたんだ。
「可愛い元恋人と、何かあったの」
そんなことを言われたのに、驚いた。
自分は、そんなことまで話したのか。
「この間と、同じ顔してるわよ」
「…そうなんだ?」
まだ忘れたままなのね、とあきれたようにため息をつく。
まったく飾り気のないその姿は、かえって彼女の芯の強さと寛容さを強調しているようで。
ああ、もしかして、と思った。
もしかしたら、あの日も。
自分はこんなふうに、彼女に甘えさせてもらったのかもしれない。
寝室のベッドに倒れこみ、慌ただしく服を脱がせて抱きしめる。
少し落ち着いたら、という彼女のあきれ声は、聞こえないふりをした。
あやすように首を抱いてくれる彼女のぬくもりは、深い息が漏れるほど、大森を安心させてくれたけれど。
やっぱり記憶はよみがえらず、何もかもが初めての感覚だった。
「まだ思い出さないの?」
「うん、ごめん」
「何が、ごめんなの」
「どこが気持ちいいか、覚えてない」