オフィス・ラブ #∞【SS集】
何か少し気になったので、ちょっと探してみると、明かりのほとんど届かないテラスに、ふたりはいた。

いい雰囲気なら、邪魔にならないうちに戻ろうと思って、様子を見ると。


やっぱり恵利は、失礼にならない程度に、迷惑そうな態度をとっていた。

木製のベンチに座って、すらっとした足を抱えている。

そのポーズは、近づくな、と言ってるように、俺には見えたんだけど。

OBは、気づいていないらしくて。


しょうがないなあ。


俺は、屋内から恵利に電話をかけた。

恵利にかけるのは初めてだったけど、いざという時のために、ゼミ生は全員番号を交換している。


恵利が、携帯を取り出すのが見えた。

いい機会だと思ったんだろう、さっと立ちあがってこっちへ向かってくる。


ガラス戸を開けながら、電話に出たところで、戸のすぐ内側にいた俺とかちあった。



「…あれっ?」



目を丸くして俺を見ると、すぐに状況を察したらしい。



「ありがとう、助かった」



安心したように、にこっと笑って、電話を切る。

なんだこれ、可愛い。



「そんな恰好、してるからだよ」



綺麗な脚を指さして言うと、本当に何も気にしていなかったらしく、恵利はきょとんとして。

じゃあ、着替えてくる、と言って、次に現れた時は、ジーンズを履いていた。

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