オフィス・ラブ #∞【SS集】
俺はたぶん、その頃から恵利をだんだん好きになっていて。

申し訳なくて、すぐに彼女と別れた。


恵利は、隙があるようで、ないようで、なかなか攻めづらい感じで。

飲み会なんかでは親しげにしてくれるんだけど、どこかきっぱりと「そこまで」と言われてる気がしてた。

それでも俺は、狙ってるのがバレバレなのを承知で、少しでも恵利といられるよう頑張った。


ある時、今度ふたりで飲もうと誘うと、意外とあっさりOKしてくれて。

その頃、恵利は、大学のすぐそばに住んでいたので、付近で飲むことにした。


恵利は、話題が多くて、暗くなくて、自分勝手でもなくて、すごく楽しい。


でも、全然酔っ払わない。


相当強いお酒を飲み続けて、やっと最後の頃に頬がピンクになるくらい。

どんな分解酵素を持ってるんだろう。



「つられて俺も飲みすぎそう」

「そしたら、とめてあげるよ」



俺は恵利が「泊めてくれる」と言ったんだと思って、ドキッとしたんだけど。

その顔を見て「制止する」って意味だったんだと、すぐにわかった。


俺がなんとなくがっかりしたのが伝わったのか、どうしたの、と訊くので、正直に言うと。

泊まってく? とおかしそうに笑った。


俺たちは、3年生になっていた。

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