オフィス・ラブ #∞【SS集】
「入れられたんですか」
「まあ、運動部やってりゃ、上下とか、いろいろあるだろ」
「何部だったんですか?」
サッカー、と返ってきて、驚いた。
「俺もです」
「知ってる、相当やるんだろ」
あ、大塚さんからか。
その方向には情報が流れるんだな。
「2年イタリアって、大胆だな」
「自由のきくうちにと思って」
どのへん? と訊いてくる新庄さんは、普通に無邪気で、楽しそうだ。
あれっ、もしかして俺、サッカーなら確実にこの人に勝てるかも?
そんな器の小さい思いを、あっさり見抜かれたらしく、気がつくと、面白がるようにこちらを見る視線とぶつかった。
煙草を尖り気味の犬歯で噛んで、頭に来るくらい余裕しゃくしゃくって感じで意地悪く微笑む。
「その程度の勝ちでよけりゃ、いくらでも譲るぜ?」
バーにゆったりと体重を預け、腕を組んで俺を見おろす目は、完全なる勝者のそれ。
負けたよ。
負けました。
あっさりあきらめられるかは、わからないけど。
少なくとも、邪魔はしません。
彼は、相変わらず隙のない袖元を顔の前に持ってくると。
休憩終わり、と勝利宣言をした。
Fin.
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thanks : メッチョ様/りんご様