オフィス・ラブ #∞【SS集】
ひとりで自分のぶんを食べ終えると、どこかで、携帯の震える音がした。

探ると、新庄さんのいたあたりのクッションの下で、点滅している携帯を見つける。



「新庄さん、お電話です」

「誰だ」



ガラス戸を少し開けて呼ぶと、煙と一緒に、まだ少し不機嫌な声が届く。

確かめると、絵里さんだった。



「出てくれ」



相手を伝えると、そう言われる。

新庄さんは、たまにこういう横着をする。



「恵利です」

『あら、こんにちは!』



絵里さんもいい加減慣れたようで、たいした驚きもなく返事が来た。

用件を聞くと、小田原の実家に叔父さん一家が泊まりに来るとのことで。

日程を合わせて、顔を見せに帰ってこいとご両親が言っているらしい。


彼に伝えると約束して、そうだ、と思いついた。



「新庄さんの、苦手な食べ物って、ありますか?」



絵里さんは、唐突な話題に一瞬間を置いたものの、あはは、と笑った。



『思いつかない、って言われた?』

「はい…」



あいつ、昔からそうなのよね、とあきれたように笑う。

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