オフィス・ラブ #∞【SS集】
(この――)
入ってくる舌を許したくなくて、身動きのとれない中、精一杯顔をそむける。
すると、耳に、文字どおり、噛みつかれた。
「痛い!」
思わず悲鳴を上げると、耳元で笑う気配がして、今度は甘く歯を立てて、じっくりと舐めあげられる。
強引なやりかたに腹が立って、いつもは遠慮してあげている手段に出た。
二の腕の後ろ側を、引っかく。
案の定、新庄さんはびくりと反応して、がばっと身体を離した。
最近見つけた、ふたつめの弱点だ。
目をすがめて私を見おろす顔は、そこそこ頭に来ているようでもあり、ぎりぎり面白がっているようでもあり。
少なくともこれは、どうあっても、絶対自分からは謝らない気だ。
だけど私には、これっぽっちも悪くない自信がある。
こんな大人げない男に、負けてたまるか。
じろりとその顔をにらみかえすと、新庄さんがふんと鼻で笑った。
「どっちが、たち悪いんだか」
なんだって!?
そっちに決まってるだろ、という思いが完全に顔に出ていたんだろう。
新庄さんは、改めてバカにするように笑うと、着ていたTシャツを脱いで、ベッドの外に放った。
がしっと、痛いくらいに私の頭を両手でつかむと、なんの手加減もないキスをぶつけてくる。
懲りない舌を噛んでやると、さすがに腹を立てたらしく、私の着ていたシャツを、乱暴に引きあげて、頭から抜いた。
完全に腕から引き抜く前に、力任せに身体をひっくり返され、ベッドに伏せるはめになる。
(あっ…!)
しまった。
そう思うけれど、もうどうにもできない。