オフィス・ラブ #∞【SS集】
「ああいうの、24時間見る奴って、ほんとにいるんだ」
バカじゃないの、と堤さんが真顔で言う。
バカでけっこう、と、ひいきのチームがクラス優勝してご満悦の新庄さんは、余裕を見せた。
「生意気だな」
その態度、と言いながら。
堤さんは、たぶん特に意識せず、すぐ手の届くところを拳で突いたんだろう。
それが、ピンポイントに、新庄さんの弱点だったのは、まったくの不幸だった。
ガシャン、とトレイの弾む音がして、食堂のお箸が、カラカランと床に散る。
テーブルに突っ伏す新庄さんを、あっけにとられて堤さんが見た。
新庄さんの正面に座っていた私は、倒れたグラスから飛んできた水がスカートに垂れないうちにと、慌ててテーブルを拭いた。
「…本気?」
堤さんの声は、こらえようともしていない笑いに満ちている。
一番知られたくない相手だったろうに。
気の毒でならないけれど、これはこれで面白い。
「あるていど、我慢できたでしょうに」
「気、抜いてた…」
立ったついでに身をかがめて耳打ちすると、脇腹を押さえた新庄さんから、悔しそうな声が弱々しく返ってくる。